恋愛システム開発
僕はプログラマだ。コンピュータと仕事をしている。
僕はこれまで恋愛というものをしたことがなかった。特に人格的な問題があったとか、そういうわけではない。ただ機会に恵まれなかっただけだ。
最近僕にも恋人ができた。実にうれしいことだ。何しろ初めてのことなので、これからのために記録に残そうと思う。僕の頭脳はハードディスクみたいに電源を切っても忘れないわけじゃないので、バックアップを取っておきたかったのだ。
僕はプログラマなので、恋愛についてもプログラムを組むような思考回路を形成してしまう。これは職業病に近い。
例えば、デートをすることにした男性について考えてみる。
普通の男性であれば、まずどこに遊びに行くかを考え、食事はどこでするか、お酒を飲むのか、どういう話題が好まれるか、といった事を考えると思う。僕もそういうことは考える。だけど、僕はその前に条件の洗い出しを行ってしまう。ここでいう条件とは、遊ぶ場所、食事、お酒、話題といった、デートの相手を満足させる手段のことだ。条件の洗い出しが終わると、僕が想定しているデートのパターンが確定する。
……という感じで考えてしまう。おかしな奴だと思わないでほしい。これは職業病なのだ。
彼女(仮に真理という名前だとする)と出会ったのは、中学校三年生のときだった。クラスがいっしょだったのだ。
真理は特にかわいいとか美人だというわけではない。個性的というわけでもない。つまり、きわめて中間的な女の子だった。彼女に対しては特に好きでも嫌いでもない、ただのクラスメイトの中の一人だった。
専門的に言えば、クラスメイトというオブジェクトのリンクリストにインスタンス化した真理のポインタをくっつけた、ということになると思う。プログラムを知らない人にはよく分からないかもしれない。
というわけで、僕はそのまま中学校を卒業した。